データが映す「放課後の真実」──府中市学童クラブアンケートに見る、現代の親子が本当に必要としているもの|府中市の教育複合施設CloverHill

Contents
- 1 はじめに:数字の裏側にある「沈黙」を聴く
- 2 第1章:13.6%という数字が突きつける現実──「声を上げられない家庭」の存在
- 3 第2章:回答者プロフィールから見える「学童利用の実態」
- 4 第3章:満足度調査が映し出す「光と影」
- 5 第4章:保育園との決定的な違い──「見えない放課後」への不安
- 6 第5章:費用負担への複雑な心理──「高い」けれど「払う」ジレンマ
- 7 第6章:85%が求める「昼食提供」──これは贅沢ではなく、社会インフラである
- 8 第7章:子どもたちの心の声──「楽しい」けれど「休まらない」?
- 9 第8章:施設環境への静かな不満──「慣れ」の中に隠れた課題
- 10 第9章:「けやきッズ」併用という選択肢──多様な放課後への模索
- 11 第10章:要望への対応が示す「対話の断絶」
- 12 第11章:Clover Hillが考える「これからの放課後」
- 13 第12章:フィードバックループの再構築
- 14 第13章:費用負担の公平性を考える
- 15 第14章:施設環境改善の緊急性
- 16 終わりに:数字の向こうに見えた「希望」
はじめに:数字の裏側にある「沈黙」を聴く
私たちは日々、子どもたちの放課後の時間と向き合い、保護者の皆様の子育てを支える立場にあります。その中で常に問い続けているのは、「今、この地域の家庭は何を必要としているのか」という問いです。
先日、府中市が公表した「令和6年度 学童クラブ利用者アンケート結果」は、その問いに対する重要な手がかりを与えてくれました。しかし、このデータを額面通りに受け取るだけでは、真実の半分も見えてきません。
今回のコラムでは、教育・心理学の専門的知見と、現場で培ってきた経験を総動員し、このアンケート結果を多角的に分析します。そして、数字には表れにくい「保護者の疲弊」と「子どもの心の機微」を読み解いていきます。
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第1章:13.6%という数字が突きつける現実──「声を上げられない家庭」の存在
統計として成立しているのか?
まず、私たちが専門家として最初に注目したのは、アンケートの**回答率13.6%**という数字です。
- 対象者:2,569名
- 回答者:349名
- 回答率:13.6%
統計学の観点から言えば、この回答率では「全体像を正確に把握できている」とは言い難い水準です。一般的に、信頼性の高い調査では最低でも30%以上、できれば50%以上の回答率が望ましいとされています。
なぜ86%は答えなかったのか
調査期間は令和7年3月13日から23日。年度末という最も多忙な時期です。
- 卒業・卒園の準備
- 新年度への引き継ぎ
- 職場の年度末処理
- 学用品の購入や名前付け
- クラス替えや先生との面談
働く保護者にとって、まさに「一年で最も余裕のない時期」にアンケートが実施されたのです。
しかし、問題の本質はそれだけではありません。
「アンケートに答える時間すら捻出できない」という事実そのものが、現代の共働き家庭の過酷さを物語っているのです。
サイレント・マジョリティの心理
回答しなかった86%の家庭は、決して「満足しているから答えない」わけではありません。
心理学の研究によれば、サービスに対する意見表明には一定の「心理的エネルギー」が必要です。
- 極端に満足している人 → エネルギーを捻出して回答
- 強い不満を持つ人 → エネルギーを捻出して回答
- 中間層(可もなく不可もなく) → 忙しさの中で声を飲み込む
つまり、この13.6%という数字は、「86%の家庭の潜在的なニーズが埋もれている」ことを意味しています。
第2章:回答者プロフィールから見える「学童利用の実態」
低学年に極端に集中する利用者
回答者の学年構成を見ると、明確な傾向が浮かび上がります。
| 学年 | 回答数 | 割合 |
|---|---|---|
| 1年生 | 182名 | 50.3% |
| 2年生 | 114名 | 31.5% |
| 3年生 | 58名 | 16.0% |
| 4年生 | 7名 | 1.9% |
| 5年生 | 1名 | 0.3% |
| 6年生 | 0名 | 0% |
実に回答者の8割以上が1〜2年生の保護者です。
そして4年生以上は合わせて**わずか8名(2.2%)**しかいません。
これは「制度の壁」である
ここで重要な事実を指摘しなければなりません。
府中市の学童クラブでは、4年生以上を受け入れているクラブ数と定員が限定されているのです。
つまり、これは:
- 「高学年は利用しなくなる」のではなく
- 「高学年は利用したくてもできない」
という供給不足の問題なのです。
4年生7名、5年生1名、6年生0名という数字は、単なる自然減少ではありません。「高学年の放課後の居場所」が圧倒的に不足している現実を示しています。
高学年こそ支援が必要という矛盾
発達心理学の観点から見ると、実は高学年こそ放課後の支援が必要な時期です。
- 思春期の入り口で心理的に不安定
- 友人関係のトラブルが複雑化
- 学習の難易度が上がり、つまずきやすい
- SNSなど新しい問題に直面
- 一人で留守番させるには危険も多い時期
しかし、制度上の制約により、最も支援が必要な高学年が排除されている──これは見過ごせない課題です。
週5日以上利用が過半数
利用頻度のデータも注目に値します。
| 利用頻度 | 人数 | 割合 |
|---|---|---|
| 週5日以上 | 197名 | 56.4% |
| 週4日 | 99名 | 28.4% |
| 週3日 | 30名 | 8.6% |
| 週2日以下 | 23名 | 6.6% |
過半数の家庭が毎日またはほぼ毎日学童クラブを利用しています。これは「放課後の居場所」として学童クラブが不可欠なインフラとなっている証拠です。
延長育成の利用状況が示すもの
| 利用状況 | 人数 | 割合 |
|---|---|---|
| 利用したことはない | 231名 | 66.2% |
| 時々利用している | 91名 | 26.1% |
| 定期的に利用している | 27名 | 7.7% |
3分の2の家庭は延長を利用していません。これは「18時までに迎えに行ける働き方」をしている家庭が多いことを示しています。
逆に言えば、定期的に延長利用している7.7%の家庭は、より過酷な勤務状況にある可能性があります。
第3章:満足度調査が映し出す「光と影」
今回のアンケートでは、22項目にわたる満足度調査が実施されました。5段階評価(満足・まあ満足・どちらともいえない・やや不満・不満)で、保護者が率直な評価を示しています。
高評価項目:基盤的機能への信頼
「満足+まあ満足」が80%を超えた項目
| 項目 | 満足+まあ満足 |
|---|---|
| 利用時間(開始・終了時間) | 93.70% |
| 放課後の生活の場として安心 | 90.26% |
| 子どもの登下館への配慮 | 88.25% |
| 児童の過ごし方 | 85.67% |
| プライバシーの保護 | 83.67% |
| 子どもへの接し方 | 80.52% |
| 事故・けが等への対応 | 80.23% |
これらは評価されるべき成果です。子どもの命を預かる場所として、安全第一で運営されている証拠であり、現場職員の日々の努力の結晶です。
中評価項目:「関わりの質」への不安
「満足+まあ満足」が70%台の項目
| 項目 | 満足+まあ満足 | どちらともいえない |
|---|---|---|
| 利用料金 | 78.80% | 12.32% |
| 保護者への情報提供 | 77.65% | 17.19% |
| 職員の業務スキル・専門性 | 76.50% | 17.19% |
| 保護者からの要望への対応 | 75.36% | 20.92% |
| おやつの提供内容 | 74.21% | 17.77% |
| 間食費(1,800円/月) | 73.64% | 19.48% |
| 施設の衛生管理 | 72.21% | 20.63% |
| 気軽に相談する機会 | 70.20% | 24.64% |
ここで注目すべきは、「どちらともいえない」が17〜24%もいるという事実です。
「どちらともいえない」という回答の真意
教育心理学の視点から見ると、「どちらともいえない」という回答には大きく2つのパターンがあります。
- 本当に可もなく不可もない(中立的評価)
- 判断するための情報が不足している(情報欠如)
今回のケースは、明らかに後者です。
自由記述欄には以下のような声がありました:
- 「職員と接する機会がない」
- 「忙しそうにしているため相談できない」
- 「学童クラブへの要望がないため、『どちらともいえない』を選択」
- 「間食の内容を把握していない」
つまり、保護者は「我が子が放課後にどんな大人と、どう過ごしているか」を十分に把握できていないのです。
第4章:保育園との決定的な違い──「見えない放課後」への不安
保育園時代との断絶
多くの保護者は、保育園時代には以下のような環境にいました:
- 毎日送迎時に保育士と会話
- 連絡帳で詳細な様子を共有
- 写真掲示やおたよりで活動内容が見える
- 担任制で「この先生」という安心感
- 困ったことがあればすぐ相談できる
しかし小学校の学童クラブでは:
- 子どもが自分で登館(送りなし)
- お迎えは玄関先で終わる
- 連絡帳は必須ではない
- 誰が主担当か分からない
- 職員と話す機会がほとんどない
この**「見えない化」**が、保護者の漠然とした不安を生んでいます。
自由記述に見る「情報への渇望」
肯定的な声:
「日々のおたより、連絡帳を通じて、学童クラブにおける生活等を知ることができ、読むことを楽しみにしている」
改善要望:
「受取漏れが生じる可能性があるため、情報提供のデジタル化を希望する」
保護者は「知りたい」のです。
我が子が放課後、誰と何をして、どんな表情で過ごしているのか。それを知ることが、働く保護者の心の支えになります。
17〜24%の「どちらともいえない」という数字は、この**「確認したくてもできない焦燥感」**の表れなのです。
第5章:費用負担への複雑な心理──「高い」けれど「払う」ジレンマ
利用料金:78.80%の満足度の意味
利用料金については、満足・まあ満足が78.80%と比較的高い数値を示しています。しかし、「やや不満」「不満」の合計は8.89%あり、他の項目と比べると不満層がやや多いことが分かります。
自由記述には:
「保育園等において保育料無償化がすすめられているため、学童クラブ育成についても補助してほしい」
これは非常に重要な指摘です。
「小1の壁」の経済的側面
- 保育園時代:無償化(3〜5歳児)
- 小学校入学後:学童クラブは有料
「小学校に上がったら教育費が減る」と思いきや、学童クラブ費用が家計を圧迫する──これも「小1の壁」の一側面です。
おやつ代1,800円/月への微妙な評価
- おやつの提供内容:満足・まあ満足74.21%
- 間食費(1,800円/月):満足・まあ満足73.64%
おやつ関連の満足度は70%台前半と、他の項目と比べてやや低めです。
自由記述には:
肯定的意見:
「子どもが学童クラブで提供されるおやつを楽しみにしている」
否定的意見:
「間食の内容を把握していない」 「提供される量が多いため、夕食がすすまないことがある」
費用面:
「給食費の無償化同様、学童クラブにおける間食費の無償化を要望する」
月額1,800円は年間で21,600円。決して小さな負担ではありません。さらに、内容が見えにくいことが不満につながっている可能性があります。
「専門性」への期待と現実のギャップ
職員の業務スキル・専門性については、満足・まあ満足が76.50%。悪くはない数字ですが、90%を超える安全管理面の評価と比べると、物足りなさを感じている保護者がいることが分かります。
自由記述には:
「専門性をより感じられる育成内容(手芸、工作等)を増やしてほしい」
これは重要な示唆を含んでいます。保護者は学童クラブに「安全に預かってくれる場所」以上のものを求め始めているのです。
「放課後の時間を通じて、子どもが何かを学び、成長してほしい」──そんな期待が垣間見えます。
第6章:85%が求める「昼食提供」──これは贅沢ではなく、社会インフラである
圧倒的な需要が示す切実さ
今回のアンケートで最も明確かつ衝撃的だったデータが、昼食提供に関する項目です。
設問23:昼食提供サービスが導入された場合、利用を希望するか
| 回答 | 人数 | 割合 |
|---|---|---|
| はい | 297名 | 85.10% |
| どちらともいえない | 49名 | 14.04% |
| いいえ | 3名 | 0.86% |
これは単なる「あったら便利」というレベルではありません。回答者の8割以上が求めているということは、もはや**「社会的ニーズ」**として捉えるべき数字です。
「いいえ」はわずか0.86%
注目すべきは、「利用を希望しない」と答えた人が**わずか3名(0.86%)**しかいないことです。
ほぼ全員が「利用したい」または「条件次第で利用したい」と考えている──この一致は驚異的です。
自由記述には:
「利用希望は、提供されるメニューの内容、利用料金による」
つまり、「昼食提供そのものには賛成だが、内容と価格を見てから判断したい」という慎重な姿勢が読み取れます。
「小1の壁」の正体
「小1の壁」という言葉を聞いたことがある保護者は多いでしょう。しかし、その実態は意外と知られていません。
保育園時代:
- 給食が当たり前
- 栄養バランスも考えられている
- アレルギー対応もある
- 朝はお弁当作りの必要なし
小学校入学後:
- 平日は給食がある(これは助かる)
- しかし夏休み・冬休み・春休みは毎日お弁当
- 40日以上の長期休暇がある
- その全てでお弁当が必要
真夏のお弁当作りという過酷さ
夏休みのお弁当作りがどれほど大変か、具体的に考えてみましょう。
朝5時起床からのルーティン:
- お弁当の調理(30〜40分)
- 自分の身支度(20分)
- 子どもを起こして準備させる(30分)
- 朝食を食べさせる(20分)
- 学童への送り出し確認
- 出勤
考慮すべき要素:
- 真夏の食中毒リスク(傷みにくいメニュー選び)
- 栄養バランス(毎日同じでは駄目)
- 子どもの好き嫌い
- 冷めても美味しいメニュー
- 彩りや見た目への配慮
- 保冷対策
これを40日以上連続で行う。
しかも、多くの保護者は自分の分の昼食も用意しなければなりません。子どものお弁当を作りながら、自分のランチも準備し、出勤後は通常業務をこなす──この負担は想像以上です。
85%という数字が語る「限界」
昼食提供を希望する85%という数字は、「もう限界です」という保護者たちの悲鳴だと、私たちは受け止めています。
これは決して「楽をしたい」という話ではありません。
- 毎日働きながら子育てをし
- 少しでも子どもと向き合う時間を作りたい
- 朝の貴重な時間を本質的なことに使いたい
そのために、お弁当作りという物理的・精神的負担から解放されたい──これは切実な願いなのです。
第7章:子どもたちの心の声──「楽しい」けれど「休まらない」?
子どもアンケートが示す重要な乖離
今回のアンケートでは、保護者だけでなく子ども自身にも3つの質問がされました(最大3名分まで回答可、合計366名分の回答)。
この子どもアンケートの結果に、私たちは教育者として最も注目しています。
設問ア:学童クラブは楽しいか
| 回答 | 人数 | 割合 |
|---|---|---|
| はい | 304名 | 83.06% |
| どちらともいえない | 47名 | 12.84% |
| いいえ | 15名 | 4.10% |
**8割以上の子どもが「楽しい」と答えています。**これは素晴らしい結果です。
友達と遊び、活動することは子どもたちにとって喜びであり、学童クラブが「遊びの場」として機能していることを示しています。
設問イ:学童クラブに行くと、ホッとした気持ちになるか
| 回答 | 人数 | 割合 |
|---|---|---|
| はい | 215名 | 58.74% |
| どちらともいえない | 106名 | 28.96% |
| いいえ | 45名 | 12.30% |
ところが、この質問になると状況が一変します。
「ホッとする」と答えた子どもは58.74%まで急落しています。
25ポイントの差が意味すること
| 項目 | 「はい」の割合 | 差 |
|---|---|---|
| 楽しい | 83.06% | - |
| ホッとする | 58.74% | -24.32ポイント |
この約25ポイントの差は何を意味するのでしょうか?
「楽しい」と「安らぐ」は別物
発達心理学の知見から言えば、「楽しさ(興奮・刺激)」と「安らぎ(安心・休息)」は全く異なる感情です。
楽しさ:
- 友達と遊ぶ
- 新しいことを体験する
- 活動的に過ごす
- → 交感神経優位(アクティブな状態)
安らぎ:
- リラックスする
- 一人になれる
- 緊張が解ける
- → 副交感神経優位(リラックスした状態)
子どもたちは学校で6時間以上、集団生活の中で「良い子」でいることを求められます。
- 授業中は静かに座る
- 先生の話を聞く
- 友達と仲良くする
- ルールを守る
これだけで、子どもの神経は相当疲弊しています。
そして放課後、学童クラブでもまた集団の中に入る。
確かに学校よりは自由で楽しいかもしれません。しかし、常に誰かがいる、常に音がある、常に何かが起こっている──そんな環境では、神経は休まりません。
4割の子どもが「ホッとできていない」現実
「どちらともいえない(28.96%)」と「いいえ(12.30%)」を合わせると、41.26%の子どもが学童クラブで安らぎを感じていないことになります。
これは決して軽視できない数字です。
特に以下のような子どもにとって、常に刺激がある環境は大きなストレスになります:
- 内向的な性格の子ども
- 感覚過敏がある子ども
- HSC(Highly Sensitive Child:人一倍敏感な子)
- 集団が苦手な子ども
- 静かな環境を好む子ども
彼らは「楽しくない」とは言えません。周りの友達は楽しそうにしているし、職員も一生懸命関わってくれている。だから「楽しい」と答えます。
でも、心の底では「疲れた」「一人になりたい」「静かな場所がほしい」と感じている──その本音が、「ホッとしない」という数字に表れているのです。
設問ウ:話したいこと、困ったことがあるとき、学童クラブ職員は話を聞いてくれるか
| 回答 | 人数 | 割合 |
|---|---|---|
| はい | 274名 | 74.86% |
| どちらともいえない | 84名 | 22.95% |
| いいえ | 8名 | 2.19% |
約75%の子どもが「聞いてもらえる」と感じているのは肯定的です。
しかし、**4人に1人は「どちらともいえない」**と答えています。
子どもが相談できない理由
「どちらともいえない」と答えた約23%の子どもたちは、なぜ相談できていないのでしょうか。
職員側の問題:
- 職員が忙しそうで声をかけづらい
- 大勢の中で個別に話す機会がない
- 誰に相談すればいいか分からない
子ども側の心理:
- 自分から話しかけるのが苦手
- 「これくらいで相談していいのか」分からない
- 他の子の前で言いたくない
- 相談しても解決しないと思っている
子どもは大人以上に、相手の様子を見て「今、話しかけていいかな」を判断します。
職員が他の子への対応に追われていたら、自分の小さな悩みは飲み込んでしまうのです。
第8章:施設環境への静かな不満──「慣れ」の中に隠れた課題
衛生管理への評価は70%台
設問22:施設の衛生管理
| 評価 | 人数 | 割合 |
|---|---|---|
| 満足 | 131名 | 37.54% |
| まあ満足 | 121名 | 34.67% |
| 満足+まあ満足 | 252名 | 72.21% |
| どちらともいえない | 72名 | 20.63% |
| やや不満 | 17名 | 4.87% |
| 不満 | 8名 | 2.29% |
他の項目と比べると、満足度がやや低めです。
そして自由記述には:
「施設の老朽化の改善を求めるご意見が複数ありました」
これは見過ごせない指摘です。
環境が子どもに与える影響
教育環境学の研究では、物理的環境が子どもの心理状態に大きく影響することが分かっています。
古くて暗い施設:
- 気分が沈みがち
- 活動意欲の低下
- 「大切にされていない」感覚
清潔で明るい施設:
- 活発で前向きな気持ち
- 積極的な活動
- 「大切にされている」実感
整理整頓された空間:
- 落ち着いて過ごせる
- 集中力の向上
- 安心感
雑然とした空間:
- 集中力が散漫
- イライラしやすい
- 落ち着かない
「子どもは環境の中で育つ」
これは教育の基本原則です。
学童クラブの施設は、多くが小学校の余裕教室や古い建物を転用しています。予算の制約もあり、新築や大規模リフォームは難しいでしょう。
しかし、「古いから仕方ない」で済ませていいのでしょうか?
子どもたちは放課後の長い時間をそこで過ごします。
老朽化した施設、不十分な採光、狭い空間、古い備品──これらは確実に、子どもの「ホッとする気持ち」を減少させる要因になっています。
第9章:「けやきッズ」併用という選択肢──多様な放課後への模索
併用は少数派だが意味は大きい
設問5:放課後子ども教室「けやきッズ」の利用について
| 利用状況 | 人数 | 割合 |
|---|---|---|
| 学童クラブのみ利用 | 291名 | 83.4% |
| 学童クラブと両方利用 | 31名 | 8.9% |
| 過去にけやきッズを利用 | 27名 | 7.7% |
現状では、学童クラブのみを利用している家庭が大多数です。しかし、約9%の家庭が両方を併用しています。
なぜ併用するのか
けやきッズは、学童クラブとは異なる性格を持ちます:
学童クラブ:
- 毎日、長時間利用できる
- 生活の場としての機能
- 安全管理が手厚い
- 職員が常駐
- 費用がかかる
けやきッズ:
- より自由度が高い
- 異学年交流がしやすい
- 様々なプログラムがある
- 費用負担が異なる
- 利用の柔軟性
併用する家庭は、おそらく**「学童クラブだけでは満たされない何か」**を求めているのでしょう。
それは:
- より多様な体験の機会
- 異なる人間関係の構築
- 子どもの個性に合った過ごし方
- 学童クラブの「息苦しさ」からの解放
- 選択肢があることの安心感
子どもの放課後に「選択肢」があることの重要性──これは今後の課題として考えるべきテーマです。
第10章:要望への対応が示す「対話の断絶」
75%の満足度だが、20%が「判断できない」
設問16:保護者からの要望への対応
| 評価 | 人数 | 割合 |
|---|---|---|
| 満足 | 142名 | 40.69% |
| まあ満足 | 121名 | 34.67% |
| 満足+まあ満足 | 263名 | 75.36% |
| どちらともいえない | 73名 | 20.92% |
| やや不満 | 5名 | 1.43% |
| 不満 | 8名 | 2.29% |
ここでも「どちらともいえない」が20%以上います。
自由記述には:
肯定的意見: (特に記載なし)
「どちらともいえない」の理由:
「学童クラブへの要望がないため、『どちらともいえない』を選択される方が複数」
否定的意見:
「改善を要望したことに対する報告がないため、保護者からの要望への対応が不十分である」
「要望がない」の本当の意味
「要望がないから『どちらともいえない』」という回答は、一見すると「満足している」ように思えます。
しかし、本当にそうでしょうか?
**実は「要望を伝える関係性が築けていない」**のではないでしょうか。
- 誰に言えばいいか分からない
- 言っても変わらないと思っている
- 忙しそうで言い出しにくい
- そもそも接点がないので要望も浮かばない
フィードバックループの欠如
もう一つの重要な指摘は:
「改善を要望したことに対する報告がない」
これは組織運営上、非常に深刻な問題です。
良好なフィードバックループ:
- 保護者が要望を伝える
- 施設側が受け止める
- 検討・対応する
- 結果を報告する
- 保護者が「聞いてもらえた」と感じる
- 次の要望も伝えやすくなる
断絶したフィードバックループ:
- 保護者が要望を伝える
- 施設側が受け止める
- (???)
- 何の報告もない
- 保護者が「無視された」と感じる
- もう要望を伝えなくなる
たとえ「すぐには対応できません」という結論でも、報告があるかないかで信頼関係は大きく変わります。
第11章:Clover Hillが考える「これからの放課後」
データが教えてくれた5つの真実
今回のアンケート分析を通じて、私たちが確信したのは以下の5点です。
1. 保護者は限界に達している
- 回答率13.6%という「答える余裕すらない」現実
- 85%が昼食提供を求める切実さ
- 費用負担への不安と、それでも「払う」覚悟
- 情報が欲しいのに得られない焦燥感
2. 子どもには「動」と「静」の両方が必要
- 83%が「楽しい」、でも58%しか「ホッとしない」
- 刺激的な環境と、安らぎの場のバランス
- 一人になれる時間・空間の必要性
- 25%の子どもは相談できていない
3. 「見える化」と「つながり」の不足
- 17〜24%の「どちらともいえない(判断できない)」
- 保護者が我が子の放課後を把握できていない不安
- 職員とのコミュニケーション機会の少なさ
- フィードバックループの断絶
4. 高学年の居場所が圧倒的に不足
- 4年生以上の受け入れ枠が限定的
- 最も支援が必要な時期に排除される矛盾
- 「小4の壁」という新たな課題
5. 施設環境の老朽化が見過ごされている
- 衛生管理への満足度は72%と低め
- 「施設の老朽化」への複数の指摘
- 環境が子どもの心理に与える影響
私たちの提言:放課後に必要な6つの改革
改革1:身体的安全から心理的安全へ
現在の学童クラブは、物理的な安全管理については高い水準にあります(88〜90%の満足度)。
しかし、これからは**「心理的安全性(Psychological Safety)」**まで視野に入れる必要があります。
心理的安全性とは:
- 自分らしくいられる
- 失敗を恐れない
- 意見を言える
- 受け入れられている感覚
- 「ここにいていいんだ」という実感
この感覚があって初めて、子どもは本当に「ホッとする」のです。
具体的施策:
- 子ども一人ひとりの「居場所感」の確認
- マイノリティ(内向的、感覚過敏など)への配慮
- 集団活動だけでなく個別の時間も保障
- 「何もしない自由」の尊重
改革2:「静」の時間を意図的に設計する
学童クラブのプログラムに、意識的に「静かな時間」を組み込むべきです。
「動」の時間:
- 外遊び
- 集団ゲーム
- スポーツ活動
- 創作活動
「静」の時間:
- 読書タイム(強制ではなく選択肢として)
- 個別活動の時間
- 一人になれるスペースの確保
- 「何もしない」選択肢の保障
- 静かに過ごせるコーナーの設置
重要なのは、「常に何かをさせる」のではなく、「何もしない自由」を保障することです。
これが真の居場所づくりです。
改革3:「見える化」のデジタル技術活用
保護者が放課後の様子を把握できる仕組みを作るべきです。
自由記述にあった「情報提供のデジタル化」は、まさに時代の要請です。
デジタルツールの活用例:
- 専用アプリでの写真共有(週1〜2回程度)
- その日の活動報告(簡潔なテキスト)
- 個別の様子の記録(月1回程度)
- オンライン面談の導入(希望者)
- デジタル連絡帳(紙の受取漏れ防止)
注意点:
- 職員の負担増にならない仕組み
- プライバシー保護の徹底
- デジタルデバイドへの配慮
「知らない」から「知っている」へ──それだけで保護者の不安は大きく軽減されます。
改革4:昼食提供は「標準装備」に
85%が求める昼食提供は、もはやオプションではなく**「基本サービス」**として位置づけるべきです。
昼食提供の3つの意義:
1. 子どもの食育
- 栄養バランスの取れた食事
- 食べる楽しみの共有
- 食習慣の形成
- みんなで食べる経験
2. 保護者の負担軽減
- 朝の時間的余裕
- 精神的負担の軽減
- 働き方の柔軟性向上
- 「小1の壁」の緩和
3. 社会的公平性
- 経済状況による格差の緩和
- 保育園と同様のサポート
- 共働き家庭への実質的支援
実現に向けた課題:
- 調理施設・設備の確保
- アレルギー対応の体制
- 適正な価格設定
- 公的補助の検討
自由記述にあった「メニューの内容、利用料金による」という意見は重要です。
質の高い給食を、適正価格で提供する──これが鍵となります。
改革5:専門性の向上と多様な体験機会
保護者が求める「専門性」に応えるため、職員の研修充実と外部講師の活用を進めるべきです。
自由記述にあった要望:
「専門性をより感じられる育成内容(手芸、工作等)を増やしてほしい」
充実させるべき活動例:
- 手芸、工作などの創作活動
- スポーツ指導
- 学習支援(宿題サポート)
- 自然体験
- 読み聞かせ
- 科学実験
- 音楽活動
ただし、これは「習い事化」とは違います。
あくまで「放課後の豊かな時間」を目指すものであり:
- 強制ではなく選択
- 競争ではなく楽しさ
- 成果ではなくプロセス
- 評価ではなく体験
この視点を忘れてはいけません。
改革6:高学年の受け入れ拡大
データが示した最も深刻な課題の一つが、高学年の居場所不足です。
現状:
- 4年生以上の受け入れが限定的
- 4年生7名、5年生1名、6年生0名
- 供給が圧倒的に不足
なぜ高学年にも居場所が必要か:
発達心理学の観点から、高学年こそ支援が必要な時期です。
- 思春期の入り口で心理的に不安定
- 友人関係のトラブルが複雑化
- 学習の難易度が上がり、つまずきやすい
- SNSなど新しい問題に直面
- 一人で留守番させるには危険も多い時期
- いじめや非行のリスクが高まる
実現に向けた課題:
- 施設・スペースの確保
- 発達段階に応じたプログラム
- 高学年に合った環境づくり
- 低学年との棲み分け
「小4の壁」を作らない社会を目指すべきです。
第12章:フィードバックループの再構築
「要望への対応」が示した課題
20%以上が「どちらともいえない」と答え、「報告がない」という指摘があった事実を重く受け止めるべきです。
理想的なコミュニケーションサイクル
保護者→施設への情報発信:
- 気軽に意見を言える雰囲気
- 複数の相談チャネル(対面、電話、メール、アプリ)
- 匿名でも意見を言える仕組み
施設→保護者への情報発信:
- 定期的な活動報告
- 要望への対応結果のフィードバック
- 「できること」「できないこと」の明確化
- できない場合の理由説明
双方向の対話:
- 年1〜2回の保護者会
- 個別面談の機会
- アンケートの定期実施(年度末以外の時期も)
- 結果の共有と改善計画の公表
このサイクルが回って初めて、信頼関係が生まれます。
第13章:費用負担の公平性を考える
「無償化」の矛盾
保護者の自由記述には、切実な声がありました:
「保育園等において保育料無償化がすすめられているため、学童クラブ育成についても補助してほしい」
「給食費の無償化同様、学童クラブにおける間食費の無償化を要望する」
現状の矛盾:
- 保育園(0〜5歳):無償化
- 小学校給食:一部自治体で無償化
- 学童クラブ:有料(利用料+間食費1,800円/月)
「小1の壁」は経済的壁でもある
保育園時代は無償だったのに、小学校に上がると学童クラブ費用が発生する──これは家計にとって新たな負担です。
学童クラブにかかる年間費用(概算):
- 利用料:地域により異なる(月5,000〜10,000円程度)
- 間食費:1,800円/月 × 12ヶ月 = 21,600円
- 昼食代(もし導入されたら):追加負担
- 年間10万円前後の負担
これは決して小さくありません。
「投資」としての視点
しかし、視点を変えてみましょう。
学童クラブへの公的投資は、社会全体への投資です:
1. 保護者が安心して働ける
- 労働力の確保
- 税収の増加
- 経済の活性化
- 女性活躍の推進
2. 子どもが健やかに育つ
- 将来の社会の担い手
- 犯罪・非行の予防
- 教育格差の縮小
- 健全な発達の保障
3. 少子化対策
- 「子育てしやすい社会」の実現
- 第2子、第3子を産みやすい環境
- 持続可能な社会の構築
学童クラブへの投資は、未来への投資なのです。
第14章:施設環境改善の緊急性
「古いから仕方ない」で済ませていいのか
自由記述にあった「施設の老朽化」への指摘を、私たちは深刻に受け止めています。
満足度72.21%は、22項目中最も低い水準でした。
環境が子どもの発達に与える影響
教育環境学の研究によれば:
物理的環境の質が、子どもの以下の側面に影響:
- 学習意欲
- 活動性
- 社会性
- 情緒の安定
- 自己肯定感
- 健康状態
古くて暗い、狭くて雑然とした環境で長時間過ごすことは、子どもの心理的発達にマイナスの影響を与える可能性があります。
最低限必要な環境整備
すぐにできる改善:
- 清掃の徹底
- 整理整頓
- 照明の改善
- 掲示物の工夫
- 植物の配置
- 子どもの作品展示
予算が必要な改善:
- 老朽化した設備の更新
- 空調設備の改善
- トイレの改修
- 床や壁の補修
- 家具の更新
- 安全対策
「子どもが大切にされている」と実感できる環境を。
終わりに:数字の向こうに見えた「希望」
13.6%という低い回答率の背後には、声を上げる余裕すらない多忙な保護者の姿があります。
83%の「楽しい」という声の裏には、58%しか感じられていない「安らぎ」の問題があります。
85%が求める昼食提供は、「もう限界です」という静かな、しかし切実な叫びです。
17〜24%の「どちらともいえない」は、「判断する情報がない」という不安の表れです。
4年生以上がほぼゼロという数字は、「高学年の居場所不足」という構造的問題を示しています。
しかし、私たちはこのデータの中に「希望」も見出しました。
希望の兆し
それは、アンケートに答えてくれた349名の保護者の存在です。
年度末の最も忙しい時期に、時間を作って声を上げてくれた──その行動そのものが、「より良い放課後を作りたい」という願いの表れです。
そして、自由記述に見られた様々な意見。時に厳しく、時に感謝を込めて、保護者たちは率直な思いを綴ってくれました。
感謝の声:
「日々のおたより、連絡帳を通じて、学童クラブにおける生活等を知ることができ、読むことを楽しみにしている」
「相談に対して真摯に対応してもらった」
「子どもが学童クラブで提供されるおやつを楽しみにしている」
批判だけでなく、感謝の声もある。これは、学童クラブが確かに多くの家庭を支えている証拠です。
私たちClover Hillの使命
私たちは、このアンケート結果を他人事とは考えません。
民間の教育施設として、私たちにできることは何か──それを真剣に考え、実践していきます。
私たちが目指すもの:
- 保護者が本当に楽になるサポート
- 子どもが心から羽を伸ばせる居場所
- 「動」と「静」のバランスが取れた環境
- 見える化による安心の提供
- 専門性の高い多様な体験
- 一人ひとりの個性を尊重する姿勢
そして何より、**「一人ひとりの子どもを大切にする」**という原点を忘れずに。
すべての子どもに、本当の「居場所」を
数字には表れにくい「小さな声」や「言えなかった言葉」にこそ、教育のヒントがあります。
- 83%が「楽しい」と答えた裏にいる、17%の「楽しくない」子ども
- 58%しか「ホッとしない」という、41%の疲れた子どもたち
- 「どちらともいえない」と答えざるを得なかった、情報不足の保護者
- アンケートに答える余裕すらなかった、86%の沈黙する家庭
- 学童クラブに入りたくても入れない、高学年の子どもたち
私たちは、この「マイノリティ」の声を聴き続けます。
府中市のこのデータは、私たち大人全員に「次のステップへ進もう」と促しているように感じます。
子どもたちの放課後が、本当の意味で:
- 安心して過ごせる
- 楽しく活動できる
- ホッと息をつける
- 自分らしくいられる
そんな時間になるまで──私たちの挑戦は続きます。
すべての子どもに、本当の「居場所」を。 すべての保護者に、本当の「安心」を。
これが、私たちClover Hillの変わらぬ使命です。
本コラムは、府中市が公表した「令和6年度学童クラブ利用者アンケート結果」を基に、教育学・心理学・社会学の専門的知見を交えて分析したものです。データの解釈には細心の注意を払っておりますが、あくまで一つの視点としてお読みいただければ幸いです。
【参考資料】
- 府中市「令和6年度学童クラブ利用者アンケート結果」
- 調査対象:学童クラブ利用者2,569名の保護者
- 調査期間:令和7年3月13日〜3月23日
- 回答者数:349名(回答率13.6%)
- 設問数:26問(満足度22項目、その他4項
府中市の教育複合施設 CloverHill のご紹介
CloverHill は、東京都府中市にある幼児から小学生までを対象とした多機能な学びの場です。府中市内で最多の子ども向け習い事を提供し、ピアノレッスン、英語、プログラミング、そろばんなど、子どもたちの好奇心を引き出し、創造力を育む多彩なカリキュラムを展開しています。
また、民間学童保育や放課後プログラムも充実しており、学びと遊びのバランスを大切にした環境の中で、子どもたちの健やかな成長をサポート。さらに、認可外保育園として未就学児向けの安心・安全な保育サービスを提供し、共働き家庭の子育てを支援しています。

東京都府中市府中市立府中第二小学校となり
教育複合施設Clover Hill
民間の学童保育・認可外保育園・20種以上の習い事
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**Clover Hill(クローバーヒル)**は、東京都府中市にある教育複合施設です。市内最大級の広々とした学童保育、認可外保育園、子供向け習い事数地域No.1を誇る20以上の多彩なプログラムを提供し、子どもたちの学びを総合的にサポートします。
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